気づき

■弱者側だから気付けること

ライターとの会話から抜粋しました。

これまで、何十人ものライターに本の執筆をお願いしてきましたが、完成することはありませんでした。
私の話を理解するのは難しいんだと思います。
ライターという立場ではなく、自分のこととして話を聞いて頂きたいのですが……それが難しいようです。
私が行なっていることは、すべての人が自分のこととして考えなければならないことです。
しかし、普通の人はいくら話をしても考えられないようです。
誰なら考えられるのか、それは障害を持っている人や難治な病気や症状で困っている人、苦しみ悩んで自殺を考える状況にある人です。

先月、小田原のワークショップに多発性硬化症の20代の息子と60代の両親が参加していました。
息子は車椅子に乗っているし、よだれが出ても飲み込めないような状態でした。
母親は、自分が勉強してなんとか息子を良くしなければと、一生懸命私の話を聞いているのですが、分からないんです。
「分からないでしょう?」と聞くと、「分からないです」と答えました。
でも、息子は「分かる」と言いました。

私の話しは、当事者でなければなかなか分からないようです。
多くの人は、そんな状態になりたくないから自分とは関係ないと思いたいのです。
日本中にいろいろな事件やトラブルが毎日起こっています。そしてその被害に遭った人がたくさんいます。でもほとんどの人は他人事です。沖縄の米兵の暴行事件で沖縄では抗議活動が盛んに行なわれていますが、沖縄以外の人達は無関心です。東京で問題があったとしても大阪は無関心です。
日本の社会は、未だに封建社会なんです。
お上(国)のやることに素直に従うよう教育され、国民のほとんどは、国の言うことをきいていればなんとかなると、人任せにしているんです。
そして、自分が当事者になって初めて、国は自分のことを守ってくれない、何もしてくれない、自分で何とかしなければ……と気づくんです。

いつ自分がそうなるかは、分からないですよ。
突然脳梗塞で倒れて半身不随になるかもしれないし、車に轢かれて車椅子の生活になるかもしれない。
そうならなくても年を取れば、寝たきりや、認知症になる可能性は誰にだってありますよ。
そうなった時、国はあてにならないというのはもう分かっているのだから、自分達で考えなければならないと思うのですが、多くの人はそんな風には考えていないですよ。でもそうなってからでは遅いんです。
私は中学生の時からこんなことを考えていました。
それは、いじめによる自殺未遂がきっかけでした。
19歳から全国を放浪し、社会の弱者側にいる人達にたくさん出会いました。
30代で、医師、歯科医師、治療家等の医療者を対象にセミナーを開始し、受講者が治せない難治な病気や症状の人を紹介でみるようになりました。そして、もっと人を知らないとそんな人の役に立てないと考え、全国各地でさまざまな状況で行き詰まり、悩んでいる人達と出会う場を作り、話を聞き一緒に解決の道を探るという活動を続けてきました。

行き詰まり、自殺を考えるような状態にいる人たちの話をたくさん聞いて、どうしたらいいのかを真剣に考えれば、誰だって私と同じようなことを言い出すし、やると思いますよ。

2012年10月29日

■気付けない人達

★2012年11月8日
新宿の本部事務所でライターの取材を行ないました。
取材の中、出てきた伊東聖鎬のメッセージを紹介します。

私は米国で、カイロプラクティック大学を卒業したカイロプラクティックDCがスクールを開校した最初の生徒でした。それは1976年のことです。
当初、お茶の水クリニックの物療科でカイロプラクティックを行なっている頃は、脊椎や骨盤を手探りで触診し施術をを行なっていましたが、レントゲン診断を行なうというカイロプラクティックは画期的に思え、熱心に勉強しましたが、すぐに行き詰まり、納得できないことやおかしいことに気付きました。

それは自分の考えを持っていれば気付くはずのものでした。
それなのに、一緒に勉強していた仲間達はまったく気付かないようでした。
一方的に習ったことをそのまま患者に押し付けるという治療法を熱心にやっていました。

それと同じような現象を私は中学時代にも経験していました。
「親や教師の言うことや教えることを、意味も分からず真に受け、大事な時間を受験勉強に費やすのはおかしい。
このままで行くと、自分のアイデンティティーをなくし、社会に投げ出され、気が付いた時は不満の塊になり、それが病気や難治な症状の原因になっていく。
そんな奴隷のような生活を送るしかなくなる」と、熱くいくら訴えても友人達は聞く耳を持たなかった。

そして10年後同窓会で「お前はいいよ、自分の好きなように生きて。俺等はお前の言った通り奴隷になってしまった」
本当に気付かないんですよね。

■意味がないことをやると、脳の破壊が起こる

私は26歳で治療の世界に入りましたが、すぐに患者不在の治療に疑問を持つようになりました。
目の前にいるその人(患者)は、良くなりたいと思って来ているのに、治療する側の自分は疑問をもっている治療を行なっているわけですから、治療をすることがストレスになってしまっているんですよ。
そのせいか、治療をしている最中に寝ちゃうんです。
鍼を打ちながら寝ちゃうんですよ。
そして毎日、ひっくり返って寝ていました。
半年ぐらいそんなことが続いていました。これではだめだと、とうとう治療をするのをやめたんです。

私はその人(患者)が良くなりたいと求めているのに対して、協力したいということでやっている。
にも関わらず、良くならないのならやる意味がない。
意味がないことをやろうとすると脳が拒否して寝てしまうんですよ。

ところが多くの医療者は、食べていかなければならないのですから、それなりに大変なんです。
そんなことを続けていると、人がどうなるかと言うと、脳の破壊がおこるんです。
自分のアイデンティティーや、自分の存在の意味をつぶしていくんです。
どうしても食べるためにやらなければならないという状況にあると、本来の自分をなくさなければならなくなるんです。

保険医療を行なっている日本の医師、歯科医師、柔整師はそんな状況に置かれているんです。
でも、私は食べるためではなく知的障害の姪を良くしたいと考えていましたから、なおさら脳が抵抗したんでしょう。

2012年11月8日 新宿
プロフィール

伊東聖鎬